【第3回】さらに怖いものがある。平均リターンが同じでも結果が変わる「順序リスク」
前回の記事:【第2回】そもそも、その計算方法でいいのか?「平均3%」だけでは、現実を表せなかった
前回は、「平均3%」を毎年一定の数字ではなく、ばらつきのある成績として扱う理由を書きました。固定利回りで計算すると、収入50万円以上では問題なさそうに見えた計算の中に、尽きる人生が隠れていました。
最後に残した疑問は、これです。同じ平均、同じ振れ幅でも、良い年が先に来るか、悪い年が先に来るかで、結果は変わらないのか。
今回は、この「順番」の話です。
順序リスクとは
「シークエンス・オブ・リターンズ・リスク(sequence of returns risk)」という言葉があります。日本語では、順序リスクと呼ばれることがあります。
意味は、名前のとおりです。運用成績の顔ぶれが同じでも、良い年と悪い年が来る順番によって、最終的な結果が変わってしまうリスクのことです。
3年間の例で見てみる
言葉だけではピンとこないので、3年間だけの、かんたんな例を作ってみました。シリーズ本編のシミュレーションとは別の、分かりやすさ重視の教材用の数字です。
- 元手は100
- 3年間のリターンは、「+20%」「0%」「−20%」の3つ
- この3つの順番だけを入れ替える
順番は、次の2通りです。
- 良い年が先: +20% → 0% → −20%
- 悪い年が先: −20% → 0% → +20%
まず、お金を取り崩さない場合です。どちらも、100×1.2×1.0×0.8=96.0で、同じ答えになります。掛け算なので、順番を入れ替えても結果は変わりません。
次に、毎年の初めに10を取り崩してから、運用する場合です。
- 良い年が先: (100−10)×1.2=108 → (108−10)×1.0=98 → (98−10)×0.8=70.4
- 悪い年が先: (100−10)×0.8=72 → (72−10)×1.0=62 → (62−10)×1.2=62.4
結果をまとめます。
| 順番 | 取り崩しなし | 毎年10を取り崩す |
|---|---|---|
| 良い年が先(+20%→0%→−20%) | 96.0 | 70.4 |
| 悪い年が先(−20%→0%→+20%) | 96.0 | 62.4 |
取り崩しなしでは、順番は関係ありません。ところが、取り崩しがあると、順番で答えが変わります。
悪い年が先に来ると、減った元手から、さらに10を引き続けることになります。その後に良い年が来ても、回復のもとになる元手が、少なくなっているからです。
順序リスクが特に問題になりやすいのは、資産を取り崩していく、退職後のほうです。
自分ごとにしてみると
ここまで読んで、おっさんは「これは他人事ではない」と思いました。
おっさんは、50代前半で会社を辞めました。取り崩しが一番長く続く時期の、入り口に立っています。しかも、子育て中で、学費など支出が大きい時期でもあります。そこに、暴落などの悪い年が重なると、影響が大きくなるのではないか。それが懸念でした。
もし退職した直後に大きな下落が来たら、ここで見た「悪い年が先」に通じる話になります。ただ、その具体的な試算は、最終回に譲ります。
次回:順番は選べない。でも……
いつ悪い年が来るかは、選べません。
でも、「どこから取り崩すか」なら、選べます。 取り崩し方を工夫すれば、この順序リスクを、少しでも和らげられないのか。
次回は、その工夫を試してみます。
次回の記事:【第4回】では、取り崩し方を工夫したら?カン・チュンドさんの考え方を参考に、出口戦略を試してみた
全6回の連載の、まだ3回目です。よければ、次回もおつきあいください。
⚠️ 投資リスクに関するご注意 投資には元本割れのリスクがあります。本連載は個人の経験に基づく情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を勧誘するものではありません。実際の投資判断はご自身の責任のもと、必要に応じて専門家にご相談ください。