父の施設入所が決まった。でも、母はどうする?──一人暮らしの2か月を支える体制を考えた

父の施設入所が決まった。でも、母はどうする?──一人暮らしの2か月を支える体制を考えた

前回の記事(老人ホーム探しは、ネット検索だけでは分からない)では、老人ホーム紹介サービスを使って施設を探した経緯を書きました。

実は、施設を探し始めた大きなきっかけは、母の病状が進行する中で、主治医から「そろそろ今後の生活の場について考えておいたほうがいい」という趣旨の話があったことでした。

そこで家族としてまず動いたのが、父を先に老人ホームへ移す判断でした。すぐに施設へ連絡を取り、入所の準備を進めました。

ところが、この時点で母が入れる施設の空きはまだなく、母のこの先の生活について、具体的な見通しは何も立っていませんでした。

父の施設入所は決まった。でも、母はどうする。

今回は、その母の生活をどう支えるかを考えた記録です。

父の施設入所が決まった。でも、問題は母だった

父は、有料老人ホームに入所できることになりました。

母も本人の希望で同じ施設を第一候補にしていたのですが、こちらはまだ空きが出るタイミングが見えていませんでした。

つまり、父だけ先に施設へ、母は当面自宅に残る、という形です。

医師から言われたことがきっかけで急いで動いたわりに、「二人一緒に」とはいかないものなんだな、というのが正直な感想でした。

施設探しさえ終われば一段落だと思っていたのに、また新しい課題が出てくる。

介護というのは、一つ解決したと思ったら、その先にまた次の課題が待っている。そんな連続なのだと、このとき改めて感じました。

施設側からは、これまでの入所待ちの実績を平均すると「2か月程度」という話を受けていました。もちろん、人の健康状態がいつどう変わるかは誰にも分からないので、確約された期間ではありません。それでも、この「2か月」を一つの目安に、母の生活をどう支えるかを考えていくことにしました。

まず「何が起きたら困るのか」を書き出してみた

母の一人暮らしが始まる前の段階で、いきなり「支援体制を作ろう」と考え始めても、何から手をつけていいのか分かりません。

そこでまず、単純に「何が起きたら困るのか」を思いつく限り書き出してみることにしました。

  • 食事をきちんと取れているか
  • 薬を飲み忘れていないか
  • 転んだり、体調が急変したりしたときに、すぐ気づけるか
  • 夜間、誰も様子を見ていない時間帯に何かあったらどうするか
  • 一人でいる時間が長くなることで、気持ちが落ち込んでいないか
  • 通院や日々の細かい用事を、誰がどこまでサポートするか

こうして並べてみると、「見守り」だけでは足りないことがよく分かります。

生活面・医療面・心理面と、心配ごとにはいくつかの種類があり、それぞれ対応する手段が違う。

このリストが、次のステップの土台になりました。

壁打ちしながら、在宅支援を表にしてみた

心配ごとを並べただけでは、まだ「誰が何をしてくれるのか」がはっきりしません。

そこで、普段使っているAIに今の状況と心配ごとのリストを伝えて、一緒に整理してもらうことにしました。

実際に使った聞き方は、こんな感じです。

父が施設に入った後、母が約2か月一人暮らしになる。現在の支援は◯◯。健康状態は◯◯。家族が対応できるのは◯◯。この条件で、①想定されるリスク、②現在の支援で足りない部分、③ケアマネに相談すべき事項、④状態が悪化した場合の次の選択肢、に分けて整理してください

このように条件と聞きたいことを分けて伝えると、漠然とした不安が「相談できる形」に変わっていきます。

こうしてまとめたのが、次の在宅支援体制です。

役割 内容
訪問診療 2週間に1回・お薬管理・緊急対応
訪問看護 週1〜2回・体調確認・医療処置
訪問介護 週1回・生活援助
食事・安否確認 配食サービスの弁当を平日毎日届けてもらい、その際に顔を合わせて安否確認
見守り 冷蔵庫の開閉センサーで生活状況を確認
全体調整 ケアマネジャーが月1回訪問し、サービス全体を調整

一つひとつは、特別なものではなく、今の状況で使えそうな制度やサービスを組み合わせただけのものです。

ただ、こうして表にしてみると、「平日の日中は複数の目が入っているが、夜間は空白になっている」といった、抜け・漏れが見えてきます。

これは、頭の中だけで考えていては気づきにくいことでした。

「自立期→支援期→医療強化期」と段階を分けて考えた

もう一つ気になっていたのは、「今の支援体制が、この先もずっと同じでいいのか」という点でした。

母の病気は進行性のもので、状態は今後も変わっていく可能性があります。

そこで、今の状態を固定して考えるのではなく、状態が変化した場合にどう体制を切り替えるかを、あらかじめ段階分けして考えてみることにしました。

なお、この「自立期・支援期・医療強化期」という区分は、公的な要介護度の認定区分とは関係のない、あくまでおっさんが状況を整理するために独自につけた呼び方です。

項目 ①自立期 ②支援期 ③医療強化期
生活拠点 自宅 自宅+在宅サービス 自宅、または緩和ケア病棟
代替拠点 - 施設(空き待ち) 施設
ケアマネ 軽い関与 本格的に関与(プラン作成) 中心的な役割(全体調整)
医療 2か月に1回の通院 訪問診療スタート 訪問診療+緊急対応・入院併用
家族のサポート 見守り中心 定期訪問・毎日通話 頻繁な関与・意思決定
状態の目安 ほぼ自立 一部介助が必要 症状コントロールが必要
トリガー例 - 食事量の低下・外出の減少 痛み・呼吸苦・急変
対応の軸 本人の生活維持 生活と安全の両立(夜間の急変リスクを意識) 苦痛の緩和と本人の意思の尊重

この時点でのおっさんなりの自己評価は、「②の支援期に相当、しかも①から②への移行期」というものでした。

そしてこの先は、②と③のあいだを行ったり来たりしながら対応していくことになるだろう、という見通しを持ちました。

表にしたことで、「今どのあたりにいるのか」を家族の中で共有しやすくなったのは、大きな収穫でした。

ちなみに「医療強化期」の欄にある緩和ケア病棟についても、この段階で候補になりそうな病院をいくつか調べておきました。実際にどんな条件で入院できるかは病院や本人の状態によって変わってくるはずなので、ここでは「候補を調べておいた」というところまでにとどめておきます。

主治医に表を見せて相談した

こうして作った2つの表を、実際に主治医に見せて相談してみました。

聞きたかったのは、主に「今の見立てで合っているか」「②の支援期は、どのくらいの期間続くものと考えておけばいいか」という点でした。

実際に相談してみて、分かったこと・修正したこと

相談してみて、一番印象に残ったのは、②の支援期についての見立てでした。

おっさんとしては、②支援期を「しばらく安定して続く、真ん中の段階」だと何となく思い込んでいました。在宅サービスを組み合わせれば、その状態がある程度の期間は続くだろう、という感覚です。

ところが、主治医からは、「②の支援期は、思っているほど長くはない。むしろ非常に短い移行期間と考えておいたほうがいい」という趣旨の助言を受けました。

これは、家族だけで考えていたら絶対に持てなかった視点でした。

もし②の状態がずっと続くと考えていたら、「まだ大丈夫そうだから」と、施設への入所準備を進める緊急度の感じ方が、今とはもっと緩やかなものになっていたかもしれません。

しかし、支援期そのものが短いのだとすれば、悪化の兆候が見えてから動き出したのでは、施設探しや入所手続きが間に合わない可能性があります。

もちろん、これはあくまでおっさんの状況について専門家から受けた助言であり、「支援期は一般的にこのくらいの期間である」と言い切れるものではありません。それでも、「支援が必要になってきたと感じたら、そこから先の悪化は早いかもしれない」という前提で動いたほうがいい、ということは、おっさんの中でかなり大きな気づきになりました。

2か月を「根性で乗り切る」のではなく、支援を組み合わせる

正直に言うと、最初は「2か月くらいなら、何とかなるだろう」という気持ちが少しありました。

しかし、心配ごとを書き出し、支援体制を表にし、専門家に相談していく過程で、「何とかなるだろう」という感覚がいかに根拠のないものだったかに気づかされました。

家族の気合いや根性でその場をしのごうとするのではなく、訪問診療・訪問看護・訪問介護・配食・見守り機器・ケアマネジャーによる調整、といった仕組みを組み合わせておく。

そのほうが、家族自身も安心して過ごせますし、何より母本人にとっても安全だと感じました。

一人で、あるいは家族だけで抱え込まないこと。

これも、今回改めて実感したことの一つです。

今回の経験から、最初にやればよかったこと

今回の経験を振り返って、次に同じような状況になる人がいるなら、次のような順番で進めるといいのではないかと思います。

  1. 「何が起きたら困るのか」を、思いつく限り書き出す
  2. 心配ごとに対応する在宅支援を、表にして可視化する
  3. 今の状態だけでなく、状態が変化した場合の段階分けもあらかじめ考えておく
  4. 作った表を持って、主治医に相談し、抜け漏れを補ってもらう
  5. 「今の安定した状態が、この先も長く続く」と決めつけず、次の段階への移行はもっと早いかもしれないという前提で、施設への入所準備だけは前倒しで進めておく

特に5つ目は、今回相談してみて初めて気づいたことでした。

②の支援期を「しばらく続く安定した段階」だと思い込んだままでいたら、次の入所準備を進める緊急度の受け止め方は、もっとゆっくり構えたものになっていたと思います。

こうして書き出してみると、当たり前のことのようにも見えます。

しかし、実際にその渦中にいるときは、こうした順番を踏むこと自体になかなか気づけませんでした。

こうして体制を整え、「まだ大丈夫そうに見えても、次の準備は早めに進めておく」という方針に切り替え、おっさんとしては一区切りついたような気持ちになっていました。

ところが、この安心もつかの間のことでした。母の状態は、こちらが思っていたよりもずっと早く動き出すことになります。

その顛末は、また別の記事で書きたいと思います。