【第5回】生活費が毎年2%ずつ増えたら?資産寿命をシミュレーションしてみた

【第5回】生活費が毎年2%ずつ増えたら?資産寿命をシミュレーションしてみた

前回の記事:【第4回】では、取り崩し方を工夫したら?カン・チュンドさんの考え方を参考に、出口戦略を試してみた

前回まで、資産の「増え方」と「取り崩し方」を見てきました。第4回の最後に、「生活費が、毎年少しずつ上がっていったら?」と問いかけました。

それが、今回のテーマです。運用ではなく、使うお金のほうを動かしてみます。

生活費300万円は、40年間ずっと同じ?

ここまでの計算は、生活費を年300万円で、40年間ずっと固定していました。第1回の前提表に、「物価は動かない前提」と書いたとおりです。

でも、現実の物価は動きます。20年後も、いまの300万円で同じ暮らしができるとは限りません。

そこで今回は、生活費が毎年2%ずつ増えるとして、計算し直してみました。

生活費は、どこまで膨らむか

年2%で増えると、生活費はこう変わります。

  • 50歳:300万円
  • 60歳:約366万円
  • 70歳:約446万円
  • 80歳:約543万円
  • 89歳(50歳からの40年目、シミュレーションの最終年):約650万円

90歳なら、式の上では約662万円です。いまの暮らしと同じものを買うのに、最後には2倍以上のお金がかかる計算です。

何を変えて、何を変えなかったか

ここは、正確に書いておきます。

変えたのは、生活費と年金です。生活費は年2%ずつ増えるとし、年金も物価に連動して増えるとしました(こちらを主な結果とします)。第1回の約280万円は、いまの物価での額です。連動させると、50歳時点のその額を起点に毎年2%ずつ増え、65歳の受給開始時点で約380万円になる、という置き方です。年金の面では、やや楽観寄りの置き方かもしれません。

変えなかったのは、それ以外です。住宅ローン、教育費、収入は、名目のまま一定です。安全資産の年1%も、標準偏差15%も、リスク資産の平均3%も、そのままにしました。

第2回で書いたとおり、この平均3%は、物価の変動を差し引く前の、見かけの数字(名目)です。物価が年2%上がる世界で、リターンを3%のままにすると、実質的には、リターンが約1%に下がった、厳しい条件にもなります。安全資産の年1%も据え置きなので、実質ではマイナスになります。

つまり今回は、生活費だけを動かしたわけではありません。「生活費が上がる」ことと、「物価の分だけ、運用の実質的な力が弱まる」ことの、両方が入った試算です。

90歳まで持つ確率

収入ごとの、90歳まで持つ確率を、3つの条件で比べました。次の図の上段は、前の節の生活費の推移です。下段の棒グラフが、収入ごとの確率です。

上段は、生活費の推移を、インフレなしと年2%で比べた折れ線(50歳から89歳)。下段は、収入0〜200万円ごとの、90歳まで資産が持つ確率を、インフレなし、年2%(年金も物価に連動)、年2%(年金は名目固定)の3つの条件で比べた棒グラフ

棒は、左から、インフレなし、年金も物価に連動する場合(主な結果)、年金が名目のまま固定の場合(40年間まったく増えない、極端に悲観的な場合)の順です。

読み取れたこと

収入100万円で見ると、インフレなしの86.4%から、年金が物価に連動する場合は67.3%へ、約19ポイント下がりました。収入200万円でも、99.0%から93.5%です。

年金が名目のまま固定だと、収入100万円で10.6%と、極端に低くなります。

現実の年金は、物価や賃金の変動に応じて改定され、マクロ経済スライドで伸びが抑えられる場合もあります。現実がどうなるかは分からず、年金が物価に連動する場合と、名目のまま固定の場合の間に収まるとも限りません。

おっさんにとっての気づきは、物価を入れただけで、ここまで結果が変わることでした。運用の成績だけでなく、物価という前提も、資産寿命を大きく左右します。

次回:最終回

支出の増え方は、ゆっくり効いてくるリスクです。では、退職した直後に、一気に打撃が来たら。

次回は最終回です。一番怖いケースを、意図的に作ってみます。なお、最終回の試算は、物価が動かない前提に戻します。

次回の記事:【第6回】退職直後に大暴落したら?50代早期退職の資産寿命をストレステストしてみた

全6回の連載も、いよいよ最終回です。よければ、次回もおつきあいください。


⚠️ 投資リスクに関するご注意 投資には元本割れのリスクがあります。本連載は個人の経験に基づく情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を勧誘するものではありません。実際の投資判断はご自身の責任のもと、必要に応じて専門家にご相談ください。